エリン・ライト

1990年テネシー州メンフィス生まれのエリン・ライトは、2012年にシカゴ美術館附属美術大学で美術学士を取得後、2016年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校にて建築学修士を取得しました。現在はロサンゼルスを拠点に活動し、作家活動の傍らウッドベリー大学で建築学の非常勤教授を務めています。ライトの作品は静物画の系譜を受け継ぎながら、3DCGを髣髴させる異様なほどの精密さと滑らかな表面を特徴とした作風を展開しています。“無関心”をテーマに、彼女は自身の存在を示唆するような跡を一切残さないよう、筆を緻密にコントロールしながら制作します。また、ライトの絵画は一般的な遠近法の代わりに、建築図面において立体物を平面上に図示する際に用いる等角投影法を採用しています。この手法では消失点が存在しないため、画面内にオブジェクトを自由自在かつ非階層的に配置できます。ワイングラスやテニスボール、盆栽といったさまざまなモチーフが複数のキャンバスにわたって繰り返し登場することによって、観る者の視線を巧みに紡がれた物語の中へ導いていきます。これら作品は一連の表現として、文化的規範や個人の心理状態が、インテリアデザインの細部から普遍的な社会通念に至るまで、私たちの生活にどのような影響を与えているかを考察します。それぞれの絵画は断片的なエピソードであると同時に壮大な物語の一コマでもありますが、ライトの作品はすべてを語ることはなく、観る者が自分なりの解釈を育むことができるほどの余地を意図的に残しています。
ライトは2024年に自身の初個展「The Host, The Thief, The Wives, and Their Lovers」をSow & Tailor(ロサンゼルス)で開催し、近年ではRoberts Projects(ロサンゼルス)やWOAW Gallery(香港及びシンガポール)、そしてField Projects(ニューヨーク)など、さまざまなギャラリーのグループ展に参加しています。「Nearly Natural」MAKI Gallery(東京、2025年)は、彼女にとって日本での初個展となります。
Artworks
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Erin Wright, Bachelor I, 2025, acrylic on canvas, 158.6 x 128.4 x 4.1 cm -
Erin Wright, Bachelor II, 2025, acrylic on canvas, 128.0 x 158.8 x 4.1 cm -
Erin Wright, Runners, 2025, acrylic on canvas, 29.5 x 40.7 x 4.1 cm -
Erin Wright, The Reveal II, 2025, acrylic on canvas, red oak, 82.6 x 53.5 x 10.0 cm