田村琢郎
1989年大阪生まれの田村琢郎は、2016年に京都芸術大学を卒業したのち、名和晃平率いるアーティスト集団SANDWICHでアシスタントをしながら制作を続け、その後拠点を東京へ移して本格的な作家活動を開始しました。 田村は日常風景から制作のインスピレーションを得ることが多く、特にアスファルトや道路標識、カーブミラーなど、交通に関連するモチーフをよく作品に取り入れています。持ち味の鋭い観察眼と高い技術力、そして遊び心溢れる感性を活用して、身近なものを元の文脈や役割から切り離して、新たな存在意義を与えます。彼は日々の生活の中で見過ごされがちな事物に焦点を当てており、ささやかな気づきを不条理な規模にまで拡張することで作品へと昇華させています。 自身の芸術実践を通して現代社会にクリティカルな視点を向けると同時に、平凡な日常の中に潜むふとした発見や感動に意識を向けるよう、観る者に促しています。
近年において田村は、造花 や100 年以上も前に作られたパブリックドメインの風景画 など、自然にまつわる題材をアスファルトと織り交ぜた作品を数多く制作しています。植物と人工素材を対比させることで、便利さや自己の利益のために自然を破壊しつつも、家に観葉植物を飾り、美しい風景画を切々と描き続ける人間の矛盾した行動をさらけ出しています。一方、彼は自然を完全に無力な存在とみなしているわけではありません。搾取され続けてもなお、しぶとく、粘り強く生き続ける自然を称え、人類が環境と共存できる日が来ることへの願いを作品に込めています。
主な個展に「5W<1H」MAKI Gallery(東京、2021年)、「OUT SIDE」y gion(京都、2018年)などがある他、日本各地でグループ展への参加やパブリックアートの展示を行っています。